「青きほくろ」 浮田伸子(砂小屋書房)2017年6月20日発行

 

身めぐりの山川草木のすがたと心をていねいに写生し、そこから人生の悲哀・歓喜、詩の真実、さらには自在のフモールを鋭く抽出する歌人浮田伸子の前歌集『艸かんむり』に続く飛躍の第二歌集。

 

蕎麦殻を篩にかけて積年のかなしみこぼす秋の日のなか

死者生者つどひて暑き盂蘭盆のひと日の宴軽からなくに

わが来れば土よろこばん山畑に水菜ひらたく冬の日をあむ

茗荷の芽白きを掘りて食ふゆふべ春の土の香ほのぼのとして

たまねぎの皮に染めたるセーターのあたたかき色終日まとふ

夫の背にルリマツリの花くつつきて買い物にゆく医院にもゆく

種子多き蜜柑食みつつその種子の遺伝子の事にこだはり始む

子とわれに青きほくろのある事を思ひ出したり何ゆゑとなく

この雨も明石川へと沁みるべし庭のくぼみにたまりて光る


「歌集 ある日」   植木清理 (神戸新聞総合出版センター)

2013年9月刊

 

ほうらくの炒豆のごと踊りつつ凩を追う舗道の落葉

 

わが内臓(はら)の一部となりし点滴のボトルの気泡せわしく昇る

 

晴れ渡る夜空に向きし裸木の黒き秀末(はずえ)の氷片の月 

 

 


「傾ける壺」    田結荘ときゑ (青磁社) 

 

播州の山里に住まいし、夫と二人で老年の日々を過ごす作者。

平穏な生活にある多少の起伏、そして豊かな自然と日常の些事、

これらを修辞に凝ることなく、平明に綴った充実の第二歌集。

               

 

我も胸に不思議な壺を抱きおり悲しい時は傾ける壺 

 


「桃原邑子歌集」   桃原邑子  (ながらみ書房 2625円(税込み)

 

本歌集にみられる形態とリズムには独特のものがある。

南国琉球生まれの開放的で自由な稟質とが相まって構築された

類まれな桃原邑子の形態とリズムなのである。

               ・・・・・・船田敦弘 あとがき2より

 

普通といふすばらしきもの下さいませ神様わたしは走つてみたい

短歌などやめたらどんなに楽だらうそしてどんなに淋しいだらう

戦争の歌より相聞歌がよかつたと人々言へり嘘八百のわが恋ひ歌を 


「艸かんむり」   浮田伸子   (河島書店)

 

その詠風は、女流としてはめずらしく闊達であって、歯切れよく、

生気が立っている。好奇心が旺盛で、思いがけぬ発見も少なくない。

                ・・・・・川島喜代詩

 

艸かんむりの文字の楽しさ芽あり花あり荊も芒葬の字もある

 

わがうへを雲は動きてコスモスの花より風の生れてくるらし

 

子の憂ひわがひきうけて眠りえず愚かなりしよ亡き母に似て